国民年金の保険料が払えないとき|免除・納付猶予・学生納付特例の違い

収入が減ったり、仕事を辞めたりすると、毎月17,920円の国民年金保険料が重くのしかかります。払えないまま納付書をしまい込んでしまうと、後で取り返しがつかないことがあります。
この記事では、払えないときに使えるしくみを日本年金機構の案内で確かめます。免除・納付猶予・学生納付特例の違いと、年金額にどう響くかまで書きます。
収入が減って国民年金の保険料が払えません。放っておくとどうなるのか、免除という制度があるらしいけれど何が違うのかが分かりません。
払えないときの道は、大きく3つ
日本年金機構の案内では、経済的に納付が難しい場合のしくみがいくつかに分かれています。自分がどれに当たるかで、申請する先が変わります。

図は、3つの道です。学生は学生納付特例、50歳未満で所得が少ない人は納付猶予、それ以外は免除になります。
生活保護の「生活扶助」を受けている人や、障害年金を受けている人は、申請ではなく法定免除の対象です。出産を予定している人や出産した人には、産前産後期間の免除があります。
免除は4種類。所得の基準で決まる
保険料免除制度では、本人・配偶者・世帯主の前年所得が一定額以下の場合などに、申請して承認されると納付が免除されます。免除される額は4種類です。
日本年金機構が示している承認基準は、次の計算式です。前年所得がこの範囲内であることが条件になります。
- 全額免除:(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円
- 4分の3免除:88万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
- 半額免除:128万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
- 4分の1免除:168万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
一部免除のときは、残りの分を自分で納めます。令和8年度なら、4分の3免除で4,480円、半額免除で8,960円、4分の1免除で13,440円です。
納付猶予は「20歳以上50歳未満」
保険料納付猶予制度は、20歳以上50歳未満の人が対象です。本人・配偶者の前年所得が一定額以下の場合に、申請して承認されると納付が猶予されます。
免除と違い、世帯主の所得は見られません。親と同居していて親の所得が高い場合でも、本人と配偶者の所得が基準内なら使えます。
所得の基準は、全額免除と同じ「(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円」です。扶養している人が多いほど、基準の額は大きくなります。
学生には学生納付特例がある
学生は、免除や納付猶予ではなく学生納付特例の対象です。前年所得が一定額以下の学生が対象で、家族の所得の多寡は問われません。
日本年金機構が示している所得基準は「128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等」です。夜間・定時制・通信課程の人も含まれます。
申請先は、住民登録をしている市区町村の国民年金担当窓口、年金事務所、または在学中の学校です。学校が代行事務の許認可を受けている場合に限られます。
失業したときは、前年の所得を見ない特例がある
失業・倒産・事業の廃止などが確認できたときは、前年所得にかかわらず免除・納付猶予を受けられる特例があります。前の年に働いていて所得が高くても使えます。
必要なのは、失業等の事実が確認できる書類です。雇用保険の被保険者だった人なら、勤め先から交付される雇用保険被保険者離職票のコピーや、ハローワークから交付される雇用保険受給資格者証のコピーなどです。
事業の廃止や休止の届出を行っている人は、税務署への個人事業の開廃業等届出書の写しなどが使えます。離職票の受け取り方は失業保険はいくらもらえるにまとめています。
申請できるのは、2年1か月前まで
申請できるのは、保険料の納付期限から2年を経過していない期間です。日本年金機構の案内では、申請時点から2年1か月前までの期間とされています。
つまり、放っておいた期間もさかのぼって申請できます。ただし2年を過ぎた分は、免除も追納もできなくなります。
気づいた時点で申請するのがいちばん確実です。申請先は、住民登録をしている市区町村の国民年金担当窓口か年金事務所で、電子申請もできます。
年金額への反映は、免除の種類で違う
免除を受けた期間も、老齢基礎年金の受給資格期間には入ります。ただし年金額への反映は、免除の種類で変わります。

図は、反映の割合です。全額免除でも、全額納付した場合の2分の1は受け取れます。
日本年金機構が示している目安では、老齢基礎年金を40年納付した場合が847,300円です。40年全額免除となった場合は423,650円になります(どちらも昭和31年4月2日以後生まれの人の額)。
納付猶予と学生納付特例の期間は、受給資格期間には入りますが年金額には反映されません。手続きをせず未納にすると、どちらにも入りません。
未納のままにすると、障害年金や遺族年金が受け取れないことがある
いちばん大きな違いは、老後の額ではありません。免除や納付猶予を受けていれば、病気やけがで障害が残ったときや亡くなったときに、障害基礎年金や遺族基礎年金の対象になります。
未納のままだと、これらを受け取れない場合があります。日本年金機構の案内では、次のような場合に支給されないとされています。
障害の場合は「初診日の属する月」、死亡の場合は「死亡日の属する月」の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が3分の2未満の場合です。もう1つは、その前々月までの1年間に保険料の未納がある場合です。
不慮の事故や病気が起きてから過去にさかのぼって申請しても、障害基礎年金の保険料納付要件には算入されません。払えないと分かった時点で申請する意味は、ここにあります。
後から納める(追納)は10年以内
免除・納付猶予の承認を受けた期間の保険料は、10年以内であれば申し出て後から納められます。これを追納といいます。
追納すると、老齢基礎年金の受給額を満額に近づけられます。未納のままだと2年で納められなくなるので、この10年という幅は免除を受けた人だけの利点です。
追納した分も、納めた年の社会保険料控除になります。保険料そのものの額や納め方は国民年金の保険料はいくらにまとめています。
納付書か、届いている案内を出して、いつの分が未納になっているかを確かめてみてください。2年1か月前までなら、まだ免除の申請ができます。
家計簿での書き方
ステップ1一部免除なら、残りの額で書き直す3分
4分の3免除なら4,480円、半額免除なら8,960円というように、納める額が変わります。家計簿の固定費の一覧も、この額に直します。
家計簿の固定費の書き方と同じ考え方です。毎月出ていく額の一覧を先に直しておけば、照らし合わせるだけで済みます。
ステップ2全額免除なら、行を残して0円にする1分
行ごと消してしまうと、免除が終わったときに戻し忘れます。行は残して額を0にし、いつまでの承認かをメモしておきます。
申請は原則として毎年度必要です。ただし全額免除と納付猶予は、希望すれば翌年度以降も継続して審査されるしくみがあります。失業等による特例免除を受けた人は、翌年度も申請が要ります。
ステップ3追納するなら、特別費の表に入れる3分
追納は、まとまった額になることがあります。特別費の表に「いつ・いくら」を入れておくと、その月だけ足りなくなるのを防げます。
迷いやすい場面
免除と猶予、どちらを申請すればよいか分からない
申請書は同じで、審査の中で当てはまるものが決まります。自分で選ぶ必要はありません。
ただし対象の年齢が違うので、50歳以上の人には納付猶予がありません。その場合は免除の基準で審査されます。
免除を受けると年金が減るから、申請しないほうがよいのか
未納にすると、受給資格期間にも年金額にも入りません。全額免除なら2分の1は反映されるので、未納より確実に多くなります。
さらに、免除期間は障害基礎年金や遺族基礎年金の要件にも算入されます。払えないなら、未納より申請のほうが選べる道が多くなります。
申請が却下された
所得が基準を超えていると承認されません。前年の所得で判断されるので、今年の収入が減っていても通らないことがあります。
失業している場合は、特例免除の対象になることがあります。離職票などを添えて申請できるか、窓口で確かめてください。
産前産後や育児の時期
出産を予定している人・出産した人には、産前産後期間の免除があります。申請する免除とは別のしくみです。
育児休業中の給付や保険料の扱いは育休手当の計算にまとめています。勤め先の厚生年金に入っている場合とは扱いが違うので、自分がどちらかを先に確かめます。
よくある質問
Q免除はできるならしたほうがよいですか
払えないなら、未納にするより申請したほうが確実です。受給資格期間に入り、全額免除でも年金額の2分の1が反映され、障害基礎年金や遺族基礎年金の要件にも算入されます。
Qいつまでさかのぼって申請できますか
納付期限から2年を経過していない期間です。申請時点から2年1か月前までがさかのぼれる範囲になります。
Q免除された分は後から納められますか
10年以内なら追納できます。未納の場合は2年で納められなくなるので、この点でも申請しておく意味があります。
Q学生ですが、アルバイトの収入があります
学生納付特例の所得基準は「128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等」です。家族の所得は問われません。
Q全額免除だと将来いくらになりますか
日本年金機構の目安では、40年納付した場合の老齢基礎年金が847,300円です。40年全額免除となった場合は423,650円になります(昭和31年4月2日以後生まれの人の額)。
Q家計簿にはどう書きますか
一部免除なら納める額に書き直します。全額免除なら行を残して0円にし、いつまでの承認かをメモしておくと戻し忘れません。
免除を受けた期間はあとから納められる
免除・納付猶予・学生納付特例を受けた期間は、承認された月の前10年以内なら追納できます。1年分で、全額免除なら年約1万円、納付猶予や学生納付特例なら年約2万円、老後の年金が増えます。
承認を受けた期間の翌年度から3年度目以降は、加算額が上乗せされます。納める額と手続きは国民年金の追納にまとめています。
まとめ
- 払えないときの道は、免除・納付猶予・学生納付特例の3つ(ほかに法定免除と産前産後の免除がある)
- 免除は全額・4分の3・半額・4分の1の4種類で、本人・配偶者・世帯主の前年所得で決まる
- 納付猶予は20歳以上50歳未満が対象で、世帯主の所得は見られない
- 失業したときは、前年の所得にかかわらず受けられる特例がある
- 申請できるのは納付期限から2年以内(申請時点から2年1か月前まで)
- 未納だと障害基礎年金や遺族基礎年金を受け取れないことがある。免除期間は算入される
- 免除・猶予の期間は10年以内なら追納できる
未納と免除は、将来の額だけでなく、もしものときの備えが変わります。今日は未納の月を確かめて、2年1か月前までなら申請に行くところから始められます。
この記事で参照した公的情報
- 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度(免除は全額/4分の3/半額/4分の1・納付猶予は20歳以上50歳未満・承認基準の所得の計算式・失業等による特例免除・申請できる期間は2年1か月前まで・年金額への反映の割合・追納は10年以内・未納のままにしたときの影響)
- 国民年金保険料の学生納付特例制度(所得基準128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等・家族の所得は問わない・対象の学校・申請先)
- 国民年金保険料(令和8年度は1か月17,920円・納付期限は翌月末日)
- 国民年金保険料の免除等の申請(申請先は市区町村の国民年金担当窓口・年金事務所・電子申請)