遺族厚生年金とは|報酬比例部分の4分の3と、受け取れる人の順番

会社員や公務員だった家族が亡くなったとき、残された家族に出るのが遺族厚生年金です。名前は知っていても、いくら出るのか、誰が受け取れるのかは調べないと分かりません。
この記事では、遺族厚生年金の額の出し方と、受け取れる人の順番を日本年金機構の案内で確かめてまとめます。自営業だった人の遺族が受け取る遺族基礎年金とは、別の年金です。
配偶者に万一のことがあったとき、遺族厚生年金が出ると聞きました。でも、いくら出るのか、いつまで出るのかが分かりません。
亡くなった人が厚生年金に入っていたときの年金
遺族厚生年金は、厚生年金保険に入っていた人が亡くなったときに、その遺族に出る年金です。日本年金機構は、次の4つのいずれかを満たす人が亡くなったときに支給されるとしています。
- 厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき
- 厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で、初診日から5年以内に死亡したとき
- 1級・2級の障害厚生(共済)年金を受け取っている人が死亡したとき
- 老齢厚生年金の受給資格を満たした人が死亡したとき
1と2の要件には、保険料の納付要件が付きます。死亡日の前日において、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要です。
★ただし、死亡日が令和18年3月末日までのときは、特例があります。亡くなった人が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。
★4の要件には、期間の条件が付きます。保険料納付済期間・保険料免除期間・合算対象期間、および65歳以降の厚生年金保険の被保険者期間を合算した期間が25年以上ある人に限られます。
受け取れる人には順番がある
遺族厚生年金は、家族の全員に出るわけではありません。亡くなった人に生計を維持されていた遺族のうち、最も優先順位の高い人が受け取ります。

図は、日本年金機構が示している優先順位です。上から順に見て、いちばん上に当てはまる人だけが受け取ります。
「子」とは、18歳になった年度の3月31日までにある人です。20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある人も含まれます。
★子のある妻または子のある55歳以上の夫が遺族厚生年金を受け取っている間は、子には支給されません。親が受け取り終わってから、子の順番が来ます。
★子のない30歳未満の妻は、5年間のみ受給できます。子のない夫は55歳以上である人に限り受給でき、受給開始は60歳からです(遺族基礎年金をあわせて受給できる場合に限り、55歳から60歳の間でも受給できます)。
★父母または祖父母も、55歳以上である人に限り受給できます。受給開始は60歳からです。
額は報酬比例部分の4分の3
遺族厚生年金の額は、亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。報酬比例部分は、亡くなった人がそれまでに受け取っていた報酬と、厚生年金の加入期間で決まります。
★受給要件の1・2・3に基づく遺族厚生年金の場合、報酬比例部分の計算において、厚生年金の被保険者期間が300月(25年)未満のときは300月とみなして計算します。若くして亡くなった場合でも、一定の額が確保されるしくみです。

図は、平成15年4月以降の加入だけで300月みなしになる場合を、給付乗率5.481/1000で計算した試算です。平均標準報酬額が30万円なら、遺族厚生年金は年36万9,968円になります。
★実際の額は、平成15年3月以前の加入期間があるかどうかで変わります。その期間には7.125/1000という別の乗率が使われるからです。自分の場合の額は、年金事務所で試算してもらうのが確実です。
★報酬比例部分の計算式そのものは年金はいくらもらえる?にまとめています。平均標準報酬額の意味も、そこで説明しています。
40歳から65歳までは、中高齢寡婦加算が付く
次のいずれかに当てはまる妻が受け取る遺族厚生年金には、40歳から65歳になるまでの間、年額635,500円が加算されます。これを中高齢寡婦加算といいます。
- 夫が亡くなったとき、40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子がいない妻
- 遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていた子のある妻が、子が18歳到達年度の末日に達した等のため、遺族基礎年金を受給できなくなったとき
平均標準報酬額30万円の例なら、遺族厚生年金36万9,968円に635,500円が加わって年100万5,468円になります。加算の有無で、額が2.7倍以上変わる計算です。
★条件が付く場合もあります。老齢厚生年金の受給権者または受給資格期間を満たしている夫が死亡したときは、死亡した夫の厚生年金保険の被保険者期間が20年以上の場合に限られます。
★65歳になると中高齢寡婦加算は終わり、自分の老齢基礎年金が始まります。昭和31年4月1日以前生まれの妻には、経過的寡婦加算が付きます。
2028年4月の見直しで変わること
検索では「遺族厚生年金 改正」「5年で打ち切り」といった語も並びます。厚生労働省の案内では、遺族厚生年金の見直しが2028年4月に施行される予定とされています。
新たに原則5年間の有期給付の対象になるのは、18歳年度末までのこどもがいない人です。女性は2028年度末時点で40歳未満の方、男性は60歳未満の方が対象とされています。
次の人は影響を受けないとされています。すでに遺族厚生年金を受給している方、60歳以降に受給権が発生する方、18歳年度末までのこどもを養育する間にある方、2028年度に40歳以上になる女性です。
★有期給付になる場合も、額は下がりません。有期給付加算が上乗せされ、いまの遺族厚生年金の額の約1.3倍になるとされています。
★5年で終わりとも限りません。障害の状態にある方や収入が十分でない方は、引き続き増額された遺族厚生年金を受け取れる「継続給付」があります。見直しの全体像は遺族年金にまとめています。
額が変わる年を書き出す手順
遺族厚生年金は、額が変わる年があらかじめ決まっています。家計の見通しを立てるには、その年を先に書き出しておくのが確実です。
ステップ1いまの額を確かめる30分
年金証書か年金決定通知書で、いま受け取っている年金の内訳を確かめます。遺族厚生年金・遺族基礎年金・中高齢寡婦加算が、それぞれ分けて書かれています。
まだ請求していない場合は、年金事務所で試算してもらえます。亡くなった人の年金手帳や基礎年金番号が分かるものを持っていきます。
ステップ2子が18歳になる年度を書く5分
遺族基礎年金は、子が18歳になった年度の3月31日で終わります。子が複数いる場合は、いちばん下の子の年度です。
この年に遺族基礎年金と子の加算が終わり、代わりに中高齢寡婦加算が始まることがあります。差し引きで手取りがいくら変わるかを、先に計算しておきます。
ステップ3自分が65歳になる年を書く5分
65歳になると中高齢寡婦加算が終わり、自分の老齢基礎年金が始まります。自分の老齢厚生年金もある場合は、受け取り方が変わります。
自分の年金の見込み額は、ねんきん定期便で分かります。読み方はねんきん定期便の見方にまとめています。
ステップ4年間収支表に書き込む15分
書き出した年を、年間収支表に入れます。収入が変わる年が先に見えていれば、その前に備えを始められます。
年間収支表の作り方は年間収支表にまとめています。年金は偶数月の15日に2か月分がまとめて入るので、その形に合わせて書きます。
年金証書か年金決定通知書を出して、遺族厚生年金・遺族基礎年金・中高齢寡婦加算が別々に書かれていないか探してみてください。内訳が分かると、額が変わる年も分かります。
迷いやすい場面
自分も老齢厚生年金を受け取れる
65歳以上で遺族厚生年金と老齢厚生年金を受ける権利がある人は、老齢厚生年金が全額支給となります。そのうえで、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給が停止されます。
日本年金機構によると、これは平成16年の年金制度改正によるものです。自分自身が納めた保険料を年金額に反映させるため、平成19年4月1日から行われている扱いとされています。
★従来の扱いが続く人もいます。平成19年4月1日前に遺族厚生年金を受ける権利があり、同日にすでに65歳以上だった人は、3つの組み合わせから選ぶ形になります。
配偶者が亡くなり、自分も65歳以上
65歳以上で老齢厚生(退職共済)年金を受け取る権利がある人が、配偶者の死亡による遺族厚生年金を受け取る場合です。このときは、2つの額を比べて高いほうになります。
1つは「死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額」です。もう1つは「死亡した人の報酬比例部分の2分の1と、自身の老齢厚生(退職共済)年金の2分の1を合算した額」です。
自分の年金を繰り下げたい
原則として、66歳に到達した日以前に遺族年金等を受け取る権利を有した場合は、老齢年金を繰り下げられません。65歳に到達する前に権利を失権していた場合は繰り下げられます。
66歳に到達した日後の繰下げ待機期間中に権利を得た場合は、その時点で増額率が固定されます。請求を遅らせても、それ以上は増えません。
★令和7年の法律改正により、令和10年3月31日時点で遺族厚生年金の権利があり65歳に到達していない人(昭和38年4月2日以降生まれ)は、老齢厚生年金を遺族厚生年金の請求を行っていない場合に限り繰下げ請求できるようになります。繰下げの中身は年金の繰下げ受給にまとめています。
自営業だった配偶者が亡くなった
国民年金だけに入っていた人が亡くなった場合、遺族厚生年金は出ません。子のある配偶者か子には遺族基礎年金が出ます。
国民年金の第1号被保険者期間がある人が亡くなった場合は、別途、寡婦年金や死亡一時金を受給できる場合があります。遺族年金全体の話は遺族年金にまとめています。
再婚したらどうなるのか
再婚すると、遺族厚生年金を受け取る権利がなくなります。受け取れなくなる事由に当てはまるので、届出が必要です。
ほかにも、直系血族・直系姻族以外の人の養子になったときなど、権利がなくなる場合があります。年金事務所に確かめてください。
税金はかかるのか
遺族年金には所得税・住民税がかかりません。非課税なので、確定申告で収入として申告する必要もありません。
ただし、遺族年金は住民税非課税世帯の判定でも収入に数えられない一方、国民健康保険料の計算では市区町村によって扱いが違うことがあります。市区町村に確かめてください。
手続きに何が要るのか
遺族厚生年金の受給権者が、老齢厚生年金・退職共済年金または遺族共済年金を受ける権利を有するときの決まりがあります。遺族厚生年金の支給額の決定のため、これらの年金の裁定の請求が必要です。
つまり、複数の年金が関わる人は、すべてまとめて請求します。年金事務所で、どの請求が要るかを確かめてから進めてください。
よくある質問
Q遺族厚生年金はいくらもらえますか
亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。平均標準報酬額30万円・300月みなしで計算すると、年36万9,968円になります。実際の額は加入期間と報酬で変わります。
Q300月みなしとは何ですか
受給要件の1・2・3に基づく遺族厚生年金では、厚生年金の被保険者期間が300月(25年)未満のとき、300月として計算することです。若くして亡くなった場合でも一定の額が確保されます。
Q子がいないと受け取れませんか
受け取れます。子のない配偶者も優先順位3位で対象です。ただし、子のない30歳未満の妻は5年間のみ、子のない夫は55歳以上に限り(受給開始は60歳から)となります。
Q中高齢寡婦加算はいくらですか
年額635,500円です。40歳から65歳になるまでの間、条件に当てはまる妻の遺族厚生年金に加算されます。
Qいつまで受け取れますか
再婚などで権利がなくなるまで続きます。ただし、子のない30歳未満の妻は5年間のみです。中高齢寡婦加算は65歳で終わります。
Q自分の老齢厚生年金と両方もらえますか
65歳以上では、老齢厚生年金が全額支給となり、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給が停止されます。合計額は、高いほうの水準になります。
Q5年で打ち切りになるのですか
2028年4月施行予定の見直しで、18歳年度末までのこどもがいない一定の年齢の人が原則5年間の有期給付になります。すでに受給している方や60歳以降に受給権が発生する方は影響を受けません。額は有期給付加算で約1.3倍になります。
Q遺族基礎年金と両方もらえますか
もらえます。日本年金機構は「遺族基礎年金を受給できる遺族の方はあわせて受給できます」としています。子のある配偶者や子が対象です。
まとめ
遺族厚生年金は、厚生年金に入っていた人が亡くなったときに、生計を維持されていた遺族のうち最も優先順位の高い人が受け取る年金です。額は、亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3になります。
被保険者期間が300月未満でも300月とみなして計算する場合があります。若くして亡くなったときでも、一定の額が確保されるしくみです。
40歳から65歳になるまでの間は、条件に当てはまる妻に中高齢寡婦加算635,500円が加わります。65歳で終わり、代わりに自分の老齢基礎年金が始まります。
額が変わる年は、子が18歳になる年度と、自分が65歳になる年です。この2つを年間収支表に先に書き込んでおくと、収入が変わる前に備えを始められます。
この記事で参照した公的情報
- 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)(受給要件4つ・納付要件・受給対象者の優先順位・報酬比例部分の4分の3・300月みなし・中高齢寡婦加算635,500円・経過的寡婦加算・65歳以上で老齢厚生年金の受給権がある場合の調整)
- 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額(報酬比例部分の給付乗率は平成15年3月以前7.125/1000・平成15年4月以降5.481/1000)
- 遺族厚生年金の見直しについて(2028年4月施行予定・5年間の有期給付の対象・影響を受けない人・有期給付加算で約1.3倍・こどもがいる場合の加算額の増額)
- 年金の繰下げ受給(遺族厚生年金の受給権がある方の老齢年金の繰下げ受給・令和7年の法律改正)