高年齢雇用継続給付|60歳で賃金が75%未満に下がったとき、賃金の10%

60歳で定年を迎えて再雇用になると、同じ仕事でも給与が下がることがあります。その下がり方が大きいときに、雇用保険から支給されるのが高年齢雇用継続給付です。
この記事では、もらえる条件・いくらになるか・申請のしかたをまとめます。令和7年4月に支給率が下がっているので、そこも分けて書きます。
60歳の再雇用で給与が下がると言われました。雇用保険から出るお金があると聞きましたが、条件も額も分かりません。
賃金が75%未満に下がったときの給付
高年齢雇用継続給付は、60歳以上65歳未満の人を対象にした雇用保険の給付です。60歳時点に比べて賃金が75%未満に下がった状態で働き続けるときに支給されます。

条件は2つあります。雇用保険の被保険者であった期間が5年以上あることと、60歳以上65歳未満の一般被保険者であることです。
そのうえで、月ごとに賃金が60歳時点の75%未満に下がっているかを見ます。75%以上の月は支給されません。
★各月に支払われた賃金額が39万7,369円以上の月も支給されません。これを支給限度額といいます。
★賃金と支給額の合計が39万7,369円を超えるときは、39万7,369円から賃金を差し引いた額が支給されます。この額は毎年8月1日に変更されます。
★60歳到達時の賃金月額にも上限と下限があります。算定した額が52万2,000円を超える場合は52万2,000円、9万6,090円を下回る場合は9万6,090円として計算します。
★60歳到達日とは、60歳の誕生日の前日のことです。10月12日が誕生日なら、60歳到達日は10月11日になります。
2つの給付金がある
高年齢雇用継続給付は2つに分かれます。基本手当を受けずに働き続ける人が受ける「高年齢雇用継続基本給付金」と、基本手当を受けたあと60歳以後に再就職した人が受ける「高年齢再就職給付金」です。
基本給付金の支給期間は、60歳に達した月から65歳に達する月までです。60歳時点で雇用保険の加入期間が5年に満たない場合は、5年になった月からになります。
再就職給付金の支給期間は、再就職した日の前日の基本手当の支給残日数で決まります。200日以上なら2年、100日以上200日未満なら1年です。65歳に達する月が限度になります。
★どちらも、その月の初日から末日まで続けて被保険者であることが必要です。月の途中で入社・退社した月は支給対象月になりません。
支給率は令和7年4月に下がった
支給率は、60歳に達した日がいつかで分かれます。厚生労働省は、雇用保険法等の一部を改正する法律(令和2年法律第14号)の施行によるものだと案内しています。

令和7年4月1日以降に60歳に達した人は、賃金が60歳時点の64%以下に下がった月は各月の賃金の10%が支給されます。64%を超えて75%未満の月は、低下率に応じて10%未満になります。
令和7年3月31日以前に60歳に達した人は、従来どおりです。61%以下なら15%、61%超75%未満なら低下率に応じて15%未満になります。
★どちらになるかは、60歳に達した日で決まります。申請した日ではありません。60歳時点で被保険者期間が5年に満たなかった人は、5年を満たした日で判定します。
いくらもらえるか
低下率によって支給額がどう変わるかを見ます。60歳時点の賃金が月30万円だった人を例にして、月ごとの支給額を並べます。

再雇用後の賃金が20万円なら低下率は66.67%です。64%を超えているので支給率は10%より低くなり、ハローワークのリーフレットでは1万4,545円と示されています。
18万円なら低下率60%で、64%以下なので賃金の10%にあたる1万8,000円が支給されます。ハローワークの案内に出ている例と同じです。
★64%より少し高い賃金だと、支給額はかえって少なくなります。20万円のときの1万4,545円より、19万2,000円(64%)のときの1万9,200円のほうが多くなります。
★最低限度額もあります。計算した支給額が2,562円以下のときは支給されません。この額も毎年8月1日に改定されます。
★賃金が26万円(86.7%)なら75%未満に下がっていないので支給されません。22万5,000円はちょうど75%なので、これも支給されません。
★計算した支給額が最低限度額を超えないときは支給されません。この額も毎年8月1日に改定されます。
64%から75%のあいだの支給率
64%を超えて75%未満のときの支給率は、ハローワークのリーフレットに早見表が載っています。低下率が0.5ポイント上がるごとに、支給率が下がっていきます。

低下率と支給率は、小数点以下第3位を四捨五入して第2位まで出します。支給額は小数点以下を切り捨てます。
★低下率70.00%なら支給率は4.16%です。賃金が21万円なら、21万円×4.16%で8,736円になります。
賃金が減らされた月の扱い
欠勤や懲戒などで賃金が減った月は、減額された分を足し戻して低下率を判定することがあります。これを「みなし賃金額」といいます。
本来の賃金より低い額で判定されると、支給額が増えてしまいます。それを防ぐためのしくみです。
★リーフレットの例では、賃金月額30万円・実際に支払われた賃金18万円・欠勤による減額3万円の場合、みなし賃金は21万円になります。低下率は70.00%で支給率4.16%となり、支給額は18万円×4.16%の7,488円です。
★減額がなければ低下率60.00%で支給率10%でした。1万8,000円もらえるはずが、7,488円に下がる計算です。
★6か月分の定期代のようにまとめて支払われる通勤手当は、支払われた月以降の各月に割り振って申請書に書きます。厚生労働省のQ&Aでは、6か月分8万円なら5か月に1万3,333円、最後の月に1万3,335円と示されています。
再雇用が決まる前に確かめる3つ
再雇用の条件が示された時点で、給付を入れた手取りがいくらになるかを計算できます。順番は次のとおりです。
ステップ160歳時点の賃金を確かめる15分
判定の基準になるのは、60歳到達時等の賃金月額です。勤め先が「雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書」を作るときの元になる額で、原則として60歳到達前6か月の賃金から計算されます。
残業代や通勤手当も含まれるので、基本給だけで見積もると額がずれます。勤め先の担当に、証明書に載る額を聞いてください。
ステップ2再雇用後の賃金の割合を出す5分
再雇用後の月額をステップ1の額で割ります。75%以上なら給付はありません。64%以下なら賃金の10%が出ます。
64%を少し超えるところは支給額が小さくなります。その帯に入りそうなら、条件の交渉材料になります。
ステップ3年金と合わせて年間の額を出す15分
在職老齢年金を受ける予定なら、給付額に応じて年金の一部が止まることがあります。賃金・給付金・年金の3つを足した額で見てください。
3つを足した額が分かれば、年間収支表に書き込めます。年金の受け取り方は年金はいつからもらえるかにまとめています。
申請のしかた
申請は、原則として2か月に一度です。提出するのは事業主ですが、本人が希望すれば自分で行うこともできます。
提出先は、事業所の所在地を管轄するハローワークです。電子申請もできます。
初回の申請
初回は「高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書」を使います。添えるのは「雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書」です。
賃金台帳・労働者名簿・出勤簿など記載内容を確認できる書類と、年齢が確認できる書類(運転免許証か住民票の写し)も必要です。マイナンバーを届け出ている人は、年齢確認書類の写しを省略できます。
★初回の提出期限は、最初に支給を受けようとする支給対象月の初日から起算して4か月以内です。受給資格だけを先に照会しておくこともできます。
2回目以降
2回目以降は、提出する月が指定されます。ハローワークから交付される「高年齢雇用継続給付次回支給申請日指定通知書」に、次の申請月が印字されています。
振込は、支給決定日からおおむね1週間程度です。厚生労働省のQ&Aにそう書かれています。
60歳到達時の賃金がいくらになるかを、勤め先に聞いてみてください。この額が分かれば、再雇用後の賃金が何%になるかを先に計算できます。
迷いやすい場面
年金が止まると聞いた
在職老齢年金を受けながら高年齢雇用継続給付を受けると、給付額に応じて年金の一部が支給停止されることがあります。厚生労働省のQ&Aにもそう書かれています。
具体的にいくら止まるかは年金事務所に確かめてください。両方の額を足して判断する必要があります。
申請を忘れていた
2か月に一度の申請なので、気づかないまま時間がたつことがあります。初回の申請期限は支給対象月の初日から4か月以内です。
期限を過ぎた月の分は受けられなくなります。再雇用が決まった時点で、勤め先の担当に申請の予定を確かめてください。
60歳で転職した場合
前の会社を辞めて基本手当を受けずにすぐ別の会社で働き始めた場合は、高年齢雇用継続基本給付金の対象になります。厚生労働省のQ&Aでも、定年の翌日に再就職した例が対象になるとされています。
基本手当を受けたあとに再就職した場合は、所定給付日数を100日以上残していれば高年齢再就職給付金の対象です。ただし再就職手当とは併給できないので、どちらかを選びます。
再就職手当とどちらを選ぶか
同じ就職について両方の条件を満たす場合は、どちらか一方しか受けられません。厚生労働省も慎重に選ぶよう案内しています。
再就職手当は一度きり、高年齢再就職給付金は最長2年の毎月の給付です。総額を計算してから選んでください。
育児休業や介護休業と重なるとき
重なった月の扱いは決まっています。月の初日から末日まで続けて育児休業給付または介護休業給付の対象になる休業をした月は、高年齢雇用継続給付の支給対象月になりません。
月の一部だけが育児休業給付や介護休業給付の対象になる場合は、支給対象になります。月まるごと休んだかどうかが分かれ目です。
廃止されると聞いた
支給率が令和7年4月1日から下がったのは事実です。ただし、私が見た厚生労働省とハローワークの案内には、いつ廃止するかは書かれていませんでした。
案内に書かれているのは支給率の変更までです。今後の扱いは、厚生労働省の発表で確かめてください。
よくある質問
Q高年齢雇用継続給付はいくらもらえますか
令和7年4月1日以降に60歳に達した人は、賃金が60歳時点の64%以下なら各月の賃金の10%です。60歳時点30万円で再雇用後18万円なら、月1万8,000円になります。
Q条件は何ですか
雇用保険の被保険者であった期間が5年以上あり、60歳以上65歳未満の一般被保険者で、賃金が60歳時点の75%未満に下がっていることです。各月の賃金が39万7,369円を超える月は支給されません。
Qいつまでもらえますか
高年齢雇用継続基本給付金は60歳に達した月から65歳に達する月までです。高年齢再就職給付金は、基本手当の支給残日数が200日以上なら2年、100日以上200日未満なら1年です。
Q支給率が15%から10%に下がったのはなぜですか
雇用保険法等の一部を改正する法律(令和2年法律第14号)の施行によるものです。令和7年4月1日以降に60歳に達した人から適用されます。
Q申請はだれがしますか
原則として事業主です。本人が希望すれば自分で申請することもできます。提出先は事業所の所在地を管轄するハローワークです。
Q年金は止まりますか
在職老齢年金を受けている場合、給付額に応じて年金の一部が支給停止されることがあります。額は年金事務所に確かめてください。
Q支給額が少なすぎると支給されないと聞きました
計算した支給額が2,562円以下のときは支給されません。これを最低限度額といいます。各月の賃金が39万7,369円以上のときも支給されません。
Q税金はかかりますか
かかりません。雇用保険の給付なので、所得税も住民税も課されません。
まとめ
高年齢雇用継続給付は、60歳以降の賃金が60歳時点より75%未満に下がったときに、雇用保険から支給される給付です。被保険者であった期間が5年以上あることが条件です。
支給率は、令和7年4月1日以降に60歳に達した人は64%以下で賃金の10%です。令和7年3月31日以前に60歳に達した人は61%以下で15%のままです。
64%を少し超える賃金だと支給額がかえって少なくなります。60歳時点の賃金と再雇用後の賃金の割合を、先に計算しておいてください。
申請は原則2か月に一度で、初回は支給対象月の初日から4か月以内です。在職老齢年金が一部止まることもあるので、両方の額を合わせて年間収支表に書き込んでおくと見通しが立ちます。
この記事で参照した公的情報
- 雇用継続給付(高年齢雇用継続給付の支給額・64%以下は各月の賃金の10%・令和7年3月31日以前に60歳到達の人は61%以下で15%・各月の賃金が397,369円を超えると不支給・支給期間・申請は原則2か月に一度)
- 窓口
- 厚生労働省・ハローワーク
- 確認日
- 確認先
- https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_continue.html
- 高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続(支給率早見表・支給限度額397,369円・最低限度額2,562円・賃金月額の上限522,000円と下限96,090円・支給率は小数点以下第3位四捨五入・みなし賃金の例・再就職手当との併給調整)
- 窓口
- 厚生労働省・ハローワーク
- 確認日
- 確認先
- https://www.hellowork.mhlw.go.jp/doc/kounenrei.pdf
- 令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します(雇用保険法等の一部を改正する法律・令和2年法律第14号の施行による)
- Q&A〜高年齢雇用継続給付〜(支給額の例・みなし賃金・60歳到達日は誕生日の前日・高年齢再就職給付金と再就職手当は併給できない・在職老齢年金の一部支給停止・非課税・審査請求は3か月以内)